オゾン療法の歴史

オゾン療法は細菌やウイルスなどの殺菌不活性化、血液循環促進、新陳代謝促進、免疫系の刺激などに効果があると言われており、1世紀以上の歴史を持つ治療法です。

また、犬や猫などの動物にも皮下注射やオゾンガスの注入によるオゾン療法が実施され、免疫力の向上による自己治癒などの効果が認められています。

ここではオゾン療法の歴史や効果について説明します。

オゾン療法の歴史

オゾン療法は日本で一般に知られている治療法であると言いがたく、現時点では保険適用外の治療法ですが、1世紀以上にわたる歴史を誇っています。

オゾン療法が本格的にはじまったのは20世紀初頭のことです。オゾンは先にも述べたとおり、その物質としての不安定さゆえ、貯蔵しておくことができません。

したがって、治療に用いる場合であっても、殺菌消毒などその他のいかなる用途であっても恒常的にオゾンを利用するためには安定したオゾン供給が欠かせないという背景がまずありました。

1857年シーメンスによってオゾン発生装置の設計がなされ、1896年ニコラ・テスラがオゾン発生装置の発明し特許を得、ここにオゾン療法をふくむオゾンの活用の礎が築かれました。

医療の現場ではまずオゾンは医療器具の殺菌消毒剤として活用されましたが、相前後してその効能が着目され治療そのものの場への導入研究もすすめられてゆきました。1915年にはドイツ人医師が婦人科がんや直腸腫瘍の悪臭を軽減させるために局所にオゾンガスをあて効果を得ました。この医師はその後、オゾン療法の可能性をさぐり、その有益性を1935年に公表し、医療用としてのオゾン発生装置を世に生み出します。ドイツは現在においてもオゾン療法がさかんに取り組まれ、その研究結果で世界をリードしている国の一つです。

世界的なオゾン療法の広がり

日本でのオゾン療法

他方、わが国においては、1923年九州帝国大学内科学教室の尾川正彦博士がドイツに先がけて医療用のオゾン発生器を発明し、同大学付属病院にて皮下注射によるオゾン療法が開始されました。

この成果を受けて、1930年代には陸軍を中心とする軍医学にも取り入れられるようになりました。一方、民間においても、1938年には日大駿河台病院にオゾン科が設置されるなど、オゾン療法の広がりの機運が高まってゆきます。

しかし戦後はそれまでと比べるとその規模が縮小されたといって過言ではありません。

アメリカでのオゾン療法

時間軸を少しもどして1930年代初頭、オゾン療法がその産声をあげ、その効果に多くの人が期待を寄せていた頃、欧州から海を隔てて渡った先のアメリカでもオゾン治療法の研究はさかんにおこなわれました。

しかし当時アメリカではAMA(アメリカ医師会)が薬物療法と競合するあらゆる療法の排除の動きを見せており、オゾン療法もその対象の一つとみなされ、FDA(アメリカ食品医薬品局)の認可がおりなかったのです。これではなかなか普及してゆきません。

それどころかFDAは1940年代にはオゾン発生装置の押収までおこなっており、同国におけるオゾン療法はドイツにおけるような広がりを見せることができず今に至っております。

なお、FDAは2001年に食品保存のための殺菌剤としてはオゾンを認可しているものの療法としてはまだ認めていません。このアメリカにおける一連のムーブメントは戦後わが国におけるオゾン療法の発展に影響を与えたものと想像できます。

オゾン療法の効果

ここまでオゾン治療の歴史をかけ足でみてきたが、肝心のオゾン療法とはどのようなものでしょうか。まず使用方法としてはガス状で使用するケースとオゾン水の形態で使用するケースの二とおりの方法があります。

ガス状にして用いる場合はその濃度によってさらに使用方法がわかれる。低濃度のオゾンガスはそのまま皮下注射に用いられます。中濃度のオゾンガスは被験者から体外に取り出した血液に混合させてまたその被験者の体内に戻すといういわゆる大量自家血液オゾン療法と呼称される療法に用いられます。高濃度のオゾンガスは瘻孔、褥瘡、難治創といった傷口だけに接触させる方法で使用されます。

オゾン水はヘルペス、真菌感染症、火傷、などを生じた部位にスプレー散布あるいは湿布にして用いられます。中耳炎の場合などには滴下処方されます。またオゾン水の進化版のような形態としてオゾン化油というものもあります。これはオリーブオイルにオゾンを反応させて生成されたもので、ドイツなど西洋諸国では処方箋があれば薬局で手に入るほど普及しているものです。このオゾン化油はオゾンガスや通常のオゾン水より保存がきくため、家庭での使用が容易で汎用性に優れています。

オゾン療法の適応症は動脈循環不全、免疫全般の活性化、肝炎、アレルギー、各種感染症、皮膚疾患、神経痛、と列挙するにいとまがありません。まるで万能薬かのようにその適応事例は多岐にわたっております。それらの適応症を治療効果の観点から整理してみますと、以下の3点に大別できます。

・細菌、真菌類、ウイルスなどの殺菌、不活性化

・血液循環促進、新陳代謝促進

・免疫系の刺激によるウイルス性疾患等の治療

オゾン療法はドイツなど保険治療適用され、普及している国々もあるものの、それらの国々おいてもなお西洋医学の主流はやはり薬物療法です。オゾン療法は従来の薬物治療とは少し異なる観点から人体の生理をとらえているともいえ、まだまだ発展の余地が大いに残されています。今後そのさらなる拡大と深化には大いに期待がよせられる分野といえるでしょう。