オゾン層とオゾンホール 破壊から回復への取り組み

オゾン層

オゾンという言葉を聞くと、オゾン層やオゾンホールを連想する人も多いでしょう。オゾン層は地球の成層圏に存在し、太陽からの有害な紫外線を吸収することで、人間だけでなく地球上の生命を守っています。

しかし、1970年頃からオゾン層の破壊が深刻化して南極上空にオゾンホールが発生したことにより、地球環境問題の大きなテーマとして取り沙汰されるようになりました。

そのため、1987年のモントリオール議定書採択を機に、オゾン層破壊物質の生産と消費を規制しました。近年ではオゾン層復活への取り組みとして、フロンガス代替物質の置き換えが進んでいます。

オゾン層とは

紫外線を防ぐオゾン層

通常の酸素は酸素原子2個からなる気体ですが、オゾンは酸素原子が3つ結合しています。酸素と違って、地球の大気中にあるオゾンは約90%が成層圏に存在しており、これを一般的にオゾン層といいます。

オゾン層は地表の上空約25kmにある成層圏に存在しており、そこに含まれるオゾンはごく微量ですが、太陽からの光に含まれる有害な紫外線をしっかり遮って、私たちを守ってくれています。

目に見えない短波長の紫外線は生物にとって有害であり、もし地球上空にオゾン層が無かったら、人間を含めた地球上の生命はほとんどが絶滅していたでしょう。

また、オゾン層は紫外線を吸収して大気を暖める効果もあり、地球の気候に大きな影響があります。

オゾン層破壊のメカニズム フロンガスが原因

スプレー缶のフロンガス
オゾン層ではオゾンの生成と分解が繰り返され、一定のバランスが保たれています。

成層圏では、強い紫外線によって酸素分子が分解するため酸素原子が発生し、これが他の酸素分子と結びつくことでオゾンが生成されます。

さらに、オゾンは他の酸素原子と反応して、2つの酸素分子に変化しながら分解されます。この一連の流れが繰り返されてオゾン濃度が保たれています。

しかし、1980年頃からオゾンのバランスが崩れ、オゾン層破壊が観測されるようになりました。

フロンガスの性質とオゾン層破壊の原理

フロンガスは炭素(C)・フッ素(F)・塩素(Cl)・臭素(Br)などの物質から生成され、エアコンや冷蔵庫の冷媒ガス、電子部品の洗浄、スプレー缶などに使用されてきました。

フロンガスは非常に安定した性質を持ち、大気中でもなかなか分解されないため、地表高くはるか上空まで舞い上がります。

フロンガスがオゾン層まで到達すると、太陽からの紫外線を受けてオゾンがフロンガスと化学反応を引き起こし、オゾン層を少しずつ破壊していきます。これがオゾン層破壊の原理です。

以前はエアコン廃棄や解体時に発生するフロンガスはそのまま大気に放出されていましたが、これがオゾン層の破壊につながることが判明したため、すべて回収されるようになりました。

フロンガスによるオゾン層破壊の化学反応

オゾン層破壊の主な原因は、エアコンなどの冷却剤として用いられたフッ素や、塩素の化合物であるフロンガスなどのオゾン層破壊物質です。

これらの物質は大気中に放出されると、成層圏に到達し、紫外線によって分解されて塩素原子を放出します。塩素原子はオゾンと反応し、オゾンを破壊する触媒として作用します。

Cl + O3 → ClO + O2
ClO + O → Cl + O2

上記の反応が連鎖的に起こることで、1つの塩素原子が多数のオゾン分子を破壊します。

オゾン層破壊 人体や生態系・地球環境への影響

オゾン層破壊 人体や生態系・地球環境への影響

オゾン層破壊による紫外線増加は、人体、生態系、地球環境に様々な悪影響を及ぼします。

紫外線による皮膚がんや白内障のリスク

紫外線は、皮膚がんや白内障などのリスクを高めることが知られています。

WHOの推計によると、オゾン層破壊による紫外線増加によって、2030年までに世界で年間約200万人が皮膚がんを発症するとされています。

オゾン層破壊と地球温暖化の関係

フロンガスなどのオゾン層破壊物質は、強力な温室効果ガスでもあります。気候変動がオゾン層に与える影響は大きく、成層圏の気温や大気循環に影響を与え、オゾン層の回復を遅らせる可能性があります。

また、植物プランクトンの光合成を阻害し、海洋生態系の基盤を揺るがす可能性があります。これは、食物連鎖を通じて魚類や海鳥などにも影響を及ぼします。

オゾン層破壊と地球温暖化は、どちらも地球環境に深刻な影響を与える問題ですが、モントリオール議定書によるオゾン層破壊物質の規制は、地球温暖化防止にも貢献しています。

オゾンホールとは その規模や回復予測

オゾンホールはオゾン層が破壊され、オゾンがいちじるしく希薄になった空間です。これは1982年に日本の観測隊によって南極上空で初めて確認されました。

その後の学術研究の結果、オゾンホールは少なくとも1970年初頭には発生していたものと考えられています。

オゾン層は太陽からの紫外線を吸収する働きをしていますが、オゾンホール発生下の地表ではこの働きが弱くなるために、紫外線の照射が強くなってしまいます。

このことは、オーストラリア大陸など南極に近い住民の皮膚ガン発症率が、他地域に比べて統計的に有意に高くなることが判明しており、人間の健康にも影響をもたらしているのです。

また、オゾンホールの問題は、単にその発生下のエリアだけに留まらず、他の地域にも影響を及ぼします。

オゾンホールは成層圏の吹き抜け通路ともなると言われており、そこから吹き抜けてきた濃度の高いオゾンは、大気圏で風の循環等を経て北緯40度あたりまで流入してきます。日本で北緯40度というと、秋田県や岩手県の辺りになります。

この流入したオゾンに雷や真夏日などさまざまな気象条件が伴った場合、人々がその臭いに驚くほど高濃度となって地表にあらわれることがあります。

南極と北極のオゾンホールの比較

オゾンホールは、冬季に成層圏の気温が低下し、極渦と呼ばれる大気循環が発生することで形成されます。オゾンホールは規模の多少の差はあるものの、南極上空で毎年9~10月頃に観測されています。

北極上空でも発生は確認される年度もありますが、南極よりも小規模です。これは北極の方が成層圏の気温が高く、オゾン層破壊が起こりにくい条件であるためです。

オゾンホール拡大防止の取り組み

オゾンホールの拡大が健康被害をもたらすことを重くみた国際社会では、1987年にモントリオール議定書を採択し、オゾン層破壊物質の生産と消費を規制しました。

この議定書は、国際的な環境条約の成功例として高く評価されています。

モントリオール議定書の採択と規制物質の廃止

1987年に行われたモントリオール議定書の採択の際に、オゾン層破壊に関する事柄を大きく議論し、その原因となるフロンガス使用を段階的に規制していくことを取り決めました。

日本でもモントリオール議定書に基づき、1988年オゾン層保護法が制定されました。とりわけエアコンなどの冷媒として使用されることの多かったフロンガスの規制は、大きな効果がありました。

オゾンホール拡大防止の取り組みは持続的なものとして続いており、日本でも2015年には製造、使用、廃棄に関するフロン排出抑制法が施行、2020年には改正されています。

フロンガスの代替物質開発

モントリオール議定書に基づき、オゾン層破壊物質の代替物質の開発と普及が進められました。

フロンガスの代替として以下の物質が利用されています。代替物質は温暖化係数やオゾン層破壊係数(ODP)が低いだけでなく、エネルギー効率が高いなどの利点もあります。

  • HCFC: R22 (HCFC-22)
  • HFC: R134a・R410A・R407Cなど
  • HFO: R1234yf・R1234zeなど
  • 自然冷媒: アンモニア(R717)・二酸化炭素(R744)・炭化水素系(プロパンR290、イソブタンR600aなど)

オゾンホールの回復

近年、オゾンホールの規模は縮小傾向にあり、回復の兆しが見られています。

数値モデルを用いたシミュレーションでは、モントリオール議定書の遵守が継続されれば、オゾンホールは2060年頃までに完全に消失すると予測されています。

オゾンは空気中に存在する

オゾンはもともと空気中に存在するありふれた物質です。オゾンはギリシャ語のOZEINが語源であり、これには「匂う」「嗅ぐこと」という意味があります。オゾンにはその名の通り、特有のにおいがあります。

紫外線の発生をともなう殺菌灯や誘蛾灯、あるいはコピー機のそばへ寄ったときに、どことなく青臭い、鼻につく、化学薬品めいた臭いを感じたことはありませんか。それはおそらくオゾンが発する臭いです。

空気中のオゾンは非常に薄く希釈されており、通常われわれの鼻がその臭気を感じることは有りませんが、オゾンはいつでもすぐ側にあるとても身近な存在です。

ちなみに、通常の大気中ではほとんどオゾンは生成されませんが、成層圏からの気流によってオゾンが大気中に流入しています。

紫外線・オゾン機器・電源の設計開発

紫外線ランプ スーパーバックヤード

エアピュアでは、過去に紫外線やオゾンを活用した空気清浄機や、医療機関・食品工場向けの流水型水殺菌装置・除菌防臭機器を多数製作してきました。

その経験を活かして、自社製品の開発販売だけでなく、紫外線とオゾンを活用した小型殺菌消臭ユニットの設計開発や、除菌防臭機器の設計開発受託、機器の製造販売、OEM生産も行っています。

紫外線・オゾン応用機器: 紫外線・オゾン応用機器の設計開発受託

流水型紫外線水殺菌装置: 流水型紫外線水殺菌装置 水の殺菌・水質管理

UV照射装置の設計開発: 紫外線硬化樹脂向けUVランプ・UV照射装置の設計開発

電池・バッテリー駆動型: 電池・バッテリーを用いた紫外線除菌消臭装置の設計開発

紫外線ランプ・電源回路・インバーターの設計開発受託

紫外線ランプ・CCFL・電源回路・インバーターの設計開発受託も行っています。長年にわたり、紫外線・オゾン応用機器の設計開発に携わる経験豊富なエンジニアが対応いたします。お気軽にご相談ください。

紫外線ランプ・電源回路・インバーター: 紫外線(UVC)ランプ・電源回路・インバーターの設計開発受託

CCFL電源・インバーター: CCFL電源・インバーターの設計開発委託