UV-C 紫外線C波とは何か

紫外線C波、通称UV-Cの強力な殺菌効果はよく知られています。紫外線がどのようにして水や空気を殺菌し、私たちの健康を守っているのかご存じでしょうか?

医療や食品分野、空気清浄機、さらには日常生活のさまざまなシーンに用いられるUV-C(紫外線C波)。その仕組みと効果、そして安全に活用する方法を解説します。

UV-C 紫外線C波とは何か

光は電磁波の一種で、波長の短いものからγ線・X線・紫外線・可視光線・赤外線・電波に分類されます。

太陽からの光にも紫外線や可視光線が含まれており、その中で可視光線より波長が短い10~400nm(ナノメートル)範囲の光を紫外線と呼びます。

電磁波と紫外線・可視光線の波長

人間の目で見える波長は可視光線の範囲だけで、赤外線や紫外線は人間の目では見えません。

紫外線の波長と種類

紫外線は波長によって以下の4種に分類され、UV-Aは主に日焼けの原因となり、UV-BはビタミンDの生成を促進し、他にもオゾンの生成、光化学反応などの作用があります。

電磁波と紫外線の波長の種類

  • 真空紫外線 (波長10〜200 nm)
  • UV-C (波長100〜280 nm)
  • UV-B (波長280〜320 nm)
  • UV-A (波長320〜400 nm)

その中で、波長が100〜280ナノメートル(nm)の範囲に位置するUV-C (紫外線C波)は強い殺菌効果を持ち、細菌やウイルスのDNA・RNAを破壊して繁殖を防ぐことができます。

そのため、UV-Cは水や空気の殺菌・消毒用途として、医療機関や食品製造業、空気清浄機などでよく用いられます。

UV-Cは太陽光に含まれていますが、地球のオゾン層でほとんど遮られてしまい、地表には届きません。そのため、日常生活でほとんど見ることがありません。

しかし、フロンガス等によって地球のオゾン層が破壊されると、生物に有害な紫外線が地表まで到達するため、オゾン層破壊物質の規制やノンフロン製品の普及が進められています。

UV-C 紫外線C波の殺菌効果

紫外線による除菌効果は、細菌やウイルス、カビなど、すべての菌類に対して実証されており、医療衛生や食品などの分野で幅広く使われている殺菌方法です。

また、紫外線はアルコールや次亜塩素酸といった薬剤のように物質が残らないので、口に入るものや手に触れるものでも安心して除菌することができます。

紫外線は波長によってUV-A、UV-B、UV-Cという区分があります。その中でもUV-Cと呼ばれる260nm近くの紫外線が、殺菌に一番効果があります。

細菌のDNAに対する紫外線の作用

細菌やウィルスの細胞内にある核の中には、遺伝情報を持つDNA(デオキシリボ核酸)が存在しています。紫外線による殺菌作用は紫外線が生体中のDNA(核酸)に吸収され、化学変化を起こし、損傷を与え、修復作用と失うことにあると言われています。

DNAは特定の波長の光をよく吸収することが知られています。図1の左図はDNA(デオキシリボ核酸)の吸収係数で、260nmの波長付近にピークがあります。

右図は殺菌作用の分光特性で、紫外線ランプから放射される253.7nmの波長が一番効果的です。

DNA 260nmの吸収係数

図2は図1のグラフを重ねたもので、260nmの波長付近にある吸収係数と、殺菌作用の分光特性のピークが一致しています。そのため、殺菌にはUV-C(紫外線C波)が一番効率的であることがわかります。

紫外線の殺菌効果 DNA(デオキシリボ核酸)の吸収係数

ウイルスに対する紫外線の殺菌効果

ウイルスは細菌と比べて、構造や大きさが異なりますが、紫外線による殺菌効果は同等です。

ウイルスは遺伝子(RNAまたはDNA)とたんぱく質で構成されており、細菌と違って自分で増殖できないため、細胞に自分の遺伝情報を転写して感染を繰り返しますが、ウイルスに紫外線を照射すると、感染に必要なRNAが壊れてダメージを受けます。

そのため、紫外線はウイルスに対しても非常に効果的な殺菌方法と言えるでしょう。

紫外線による新型コロナウイルス不活化

理化学研究所(理研)からは、紫外線照射による新型コロナウイルス不活化は、ウイルスRNAの損傷が原因だったとする研究結果も発表されています。

理化学研究所 研究成果: 紫外線照射による新型コロナウイルス不活化のメカニズム -ウイルスRNAの損傷が原因だった-

この研究では、波長253.7nmの紫外線を液体培地中のコロナウィルス(SARS-CoV-2)に照射し、ウイルスの感染性が99.99%減少することを実証しています。

さらに、このSARS-CoV-2の不活化の仕組みはウイルスRNAの損傷にあり、ウイルスタンパク質やウイルス粒子の形状には変化がないこと突き止めています。

紫外線殺菌のメリットとデメリット

紫外線殺菌には薬剤が不要というメリットがありますが、皮膚や目に対して有害というデメリットがあります。

アルコールや塩素の薬剤残留がない

アルコールや塩素には即効性があり、手指消毒などに適していますが、食品や水に薬剤が残るというリスクがあります。

紫外線は化学物質を残さずに除菌できるため、このような問題はありません。そのため、医療機関や食品工場・水処理施設での利用が進んでいます。

また、紫外線は物理的な方法で殺菌を行うので、環境中に薬剤や化学物質を残しません。環境にやさしい除菌手段です。

皮膚や目に対して有害

紫外線は強いエネルギーを持つため、直接肌に当たるとやけどを引き起こしたり、目にダメージを与えることがあります。特に紫外線を長時間浴びると危険であり、皮膚が赤くなる「紫外線皮膚炎」や目の「角膜炎」を引き起こすリスクがあります。

紫外線による目や肌のダメージを減らすため、必ず適切な保護具を着用してください。

また、紫外線ランプの交換時に自動でランプをオフする機能をを使うと、事故を未然に防ぐことができます。家庭用でも同様に、直接紫外線の光を見ないように注意が必要です。

オゾン発生紫外線ランプ

紫外線ランプ 殺菌とオゾン発生

紫外線ランプには、UV-C(紫外線C波)とオゾン発生の両方の波長を出せるものがあります。

殺菌紫外線253.7nmと、オゾン生成作用を持つ波長185nmの紫外線ランプ(短波長殺菌ランプ)は、光洗浄や表面処理、空気殺菌や脱臭などの目的で利用されています。

オゾンはその強力な酸化能力のため、天然元素の中ではフッ素に次いで高い除菌力を持っており、脱臭・除菌等に非常に有効な手段です。

また、オゾンはしばらくすると酸素に戻るため、次亜塩素酸や薬剤などの化学物質が残留する心配はなく、安全性の高い除菌が可能です。そのため、医療や食品などの業務用途によく用いられています。

紫外線とオゾンを併用することで、光が届かない隙間や裏側も確実に殺菌することが可能です。