流水型紫外線水殺菌装置は、水が装置内を流れる間に紫外線を照射することで、水中の細菌、ウイルス、その他の微生物を不活化する装置です。
主に飲食店・食品工場で使用する水や、工業用水などの殺菌に用いられ、加熱や薬品を用いた殺菌と比べて、低コストなことが特徴です。
水には様々な微生物や大腸菌などが含まれている可能性があり、健康に悪影響を及ぼすことがあります。抵抗力の弱い乳幼児や高齢者、病気療養中の方には、水由来の感染症リスクは深刻です。
水道水は塩素消毒されていますが、塩素臭やトリハロメタンなどの副生成物が気になります。流水型紫外線水殺菌装置は化学薬品を使用しないため、水の味や臭いが変わらず、残留物の心配がないのが特徴です。
エアピュアでは、食品工場・プール・宮水向けの水殺菌装置を設計開発してきた実績があります。水殺菌装置の設計開発に携わってきた経験豊富なエンジニアが対応いたします。お気軽にご相談ください。
流水型水殺菌装置の特徴
流水型水殺菌装置は、水を流しながら殺菌処理を行う装置です。主に紫外線(UV-C)を利用した方法が用いられ、以下の特徴があります。
- 薬剤を使用しないため、残留物がなく安全。
- 短時間で殺菌が可能。
- 水に味や臭いが残らない。
- 幅広い種類の細菌やウイルスに有効。
紫外線殺菌の仕組み
紫外線殺菌は、紫外線が持つDNA損傷効果を利用した殺菌方法です。紫外線(特に波長253.7nmのUV-C)を細菌や微生物に照射することで、DNAを破壊し、増殖を阻止します。
- 紫外線照射: 水が紫外線ランプを通過する際に、微生物は強い紫外線を浴びます。
- DNA/RNAの損傷: 紫外線は、微生物の遺伝子であるDNAやRNAの塩基配列を破壊します。
- 増殖能力の喪失: 遺伝子が損傷した微生物は、正常な増殖ができなくなり、死滅します。
流水殺菌装置の内部には紫外線ランプ(UV-C波長)が設置されており、水がその周りを通過する際に紫外線が照射されます。紫外線は微生物のDNAやRNAに損傷を与え、増殖能力を失わせます。
流水型水殺菌装置の構造と種類
- 紫外線ランプ: UV-C波長を放射する特殊なランプが使用されます。
- 保護管: 紫外線ランプを水から保護するための透明な管。
- 電源装置: 紫外線ランプに電力を供給します。
- その他: 管に接続するためのバルブや止水栓・各種センサー類
流水型水殺菌装置の種類
流水型水殺菌装置の紫外線ランプには熱陰極管、もしくは冷陰極管が用いられます。基本的にはどちらも蛍光管であり、発光の仕組みは一般の蛍光管と同じです。最近は紫外線LEDも増えてきました。
- 低圧水銀ランプ式: 熱陰極管を使った最も一般的なタイプで、効率が高く比較的安価です。
- 中圧水銀ランプ式: より高い出力の紫外線を照射でき、コンパクトな設計が可能です。
- LED式: 近年登場したタイプで、長寿命、省エネ、瞬時起動などの利点があります。
紫外線殺菌のメリットとデメリット
紫外線殺菌には、多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。他の殺菌方法との比較も交えながら、詳しく見ていきましょう。
紫外線殺菌のメリット
水の殺菌に紫外線が用いられているのは、以下のようなメリットがあるからです。
- 高い殺菌効果: 254nm波長の紫外線は、ほとんどの微生物に対して高い殺菌効果を発揮します。
- 短時間で殺菌: 数秒から数分の短い時間で殺菌が完了するため、処理時間が短縮できます。
- 二次汚染の発生が少ない: 薬品を使用しないため、水質への影響が少なく、二次汚染の心配もありません。
- 連続運転が可能: 紫外線ランプは連続運転が可能で、安定した殺菌効果が得られます。
- 小型軽量で設置が容易: 装置がコンパクトで、設置場所を選びません。
紫外線殺菌のデメリット
紫外線殺菌には、以下のようなデメリットもあります。
- 紫外線を直線状に照射するため、死角ができやすい
- 濁りや不純物に弱く、透明度が低いと殺菌効果が低下するため、前処理(ろ過など)が必要な場合がある
- 紫外線ランプには寿命があり、定期的な交換が必要
- 水殺菌装置を導入するため装置初期費用が高い
殺菌方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
紫外線殺菌 | 高い殺菌効果、短時間、二次汚染が少ない | 直線状の光、トルビディティに弱い、ランプ交換が必要 |
塩素消毒 | 安価、残留効果がある | 二次汚染、トリハロメタン生成の可能性 |
オゾン消毒 | 高い殺菌効果、短時間、トリハロメタン生成が少ない | 高価、装置が複雑 |
流水型水殺菌装置の導入事例
流水型の紫外線水殺菌装置は、家庭用浄水器から、食品加工業、医療機関、水産養殖業など、幅広い分野で利用されています。
食品工場の衛生管理と品質向上
食品工場では、製品の品質保持と衛生管理のために、殺菌された水が不可欠です。流水型水殺菌装置は、食品の製造工程で使用する水や、機器の洗浄水、最終製品の表面殺菌などに利用されています。
医療機関での感染症対策と水質維持
医療機関では、院内感染を防ぐために、高度な水質管理が求められます。流水型水殺菌装置は、手術室や透析室などで使用する水や、医療器具の洗浄水などに利用されています。
プール・浴場の水殺菌や水質管理
プールや浴場は多くの人が利用するため、水中に菌や微生物が混入しやすく、水質管理が重要です。流水型水殺菌装置によってレジオネラ菌をはじめとする病原性微生物を殺菌し、感染症のリスクを低減します。
また、紫外線殺菌は残留性がないため、塩素消毒と併用することで、より効果的な水質管理が可能です。
海水魚の飼育水や養殖水の殺菌
海水魚飼育や養殖の現場では、水質保持はとても重要です。流水型水殺菌装置によって海水中の病原微生物を抑え、海水魚や養殖水産物の生育条件を長期的に改善できます。
高齢者福祉施設向け入浴設備
高齢者は免疫力が低下していることが多く、感染症にかかりやすい傾向があります。入浴施設は湿度が高く、レジオネラ菌などの細菌や微生物が増殖しやすいため、塩素や紫外線などによる水質管理が重要です。
厚生労働省が定める「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」では、塩素消毒と併用することでレジオネラ症のリスクを低減することが推奨されています。
畜産・動物向け飲用水
家畜や動物にとって、水は生命維持に不可欠な要素であり、飲用水の水質が悪化すると、感染症や発育不良が発生し、健康や生産性に大きく影響します。
畜産・動物向け飲用水には、一般的に井戸水、地下水、水道水などが利用されますが、水源によっては汚染されている可能性もあります。給水タンクや給水器に流水型殺菌装置を設置することで、給水ライン全体を殺菌できます。
農作物の病気予防や水耕栽培
農作物の病気は、収穫量の減少や品質の低下を招き、農家の経営に大きな影響を与えます。病気の発生を未然に防ぐことは、安定した農業経営を行う上で非常に重要です。
水耕栽培では水殺菌と水質管理が特に重要であり、pH、EC、水温、溶存酸素などを適切に管理することで、病気の発生を抑え、作物の健全な生育を促進することができます。
飲料水・貯留水の殺菌
飲料水やタンクに貯留された水は、様々な原因で菌や微生物に汚染される可能性があります。水を安全に飲用するためには、適切な殺菌処理が必要です。
水道水は塩素消毒されているため、一般家庭では必ずしも必要ではありません。しかし、塩素臭が気になる方や、井戸水を使用している場合などは有効な選択肢となります。
紫外線は殺菌効果が高く残留性がないため、水質への影響が少なく味や臭いも変わりません。また、塩素消毒で生成されるトリハロメタンなどの有害な副生成物の生成を抑制できます。
貯留水の殺菌は、紫外線ランプをタンク内に直接浸漬して照射する浸漬式か、外部から紫外線を照射する外照式があります。なお、紫外線による劣化があるため、FRPなどの樹脂タンクには使用できません。
- 飲料水の殺菌: 家庭用浄水器、業務用浄水器、ミネラルウォーター製造、食品工場など
- 貯留水の殺菌: 貯水タンク、受水槽、プール、浴場、冷却塔など
紫外線殺菌の効果を高める方法
紫外線殺菌の効果は、水質によって大きく左右されます。水に濁りや有機物が多い場合、紫外線が水中に届きにくくなり、殺菌効果が低下する可能性があります。
- 水質検査の重要性: 殺菌装置を導入する前に、必ず水質検査を行い、水質に合った装置を選ぶことが重要です。
- 前処理と後処理の方法: 前処理として、濾過や凝集沈殿を行い、水中の濁りや有機物を除去することで、殺菌効果を高めることができます。
- ランプの交換時期と効果: 紫外線ランプは、経年劣化により出力が低下するため、定期的な交換が必要です。
流水型紫外線水殺菌装置の導入にあたっては、水質や使用用途に合わせた最適なシステムを選定することをお勧めします。
エアピュアでは、食品工場・プール・宮水向けの水殺菌装置を設計開発してきた実績があります。水殺菌装置の設計開発に携わってきた経験豊富なエンジニアが対応いたします。お気軽にご相談ください。
紫外線・オゾン応用機器の設計開発
エアピュアでは、過去に紫外線やオゾンを活用した空気清浄機や、医療機関・食品工場向けの流水型水殺菌装置・除菌防臭機器を多数製作してきました。
その経験を活かして、自社製品の開発販売だけでなく、紫外線とオゾンを活用した小型殺菌消臭ユニットの設計開発や、除菌防臭機器の設計開発受託、機器の製造販売、OEM生産も行っています。
紫外線・オゾン応用機器: 紫外線・オゾン応用機器の設計開発受託
流水型紫外線水殺菌装置: 流水型紫外線水殺菌装置 水の殺菌・水質管理
UV照射装置の設計開発: 紫外線硬化樹脂向けUVランプ・UV照射装置の設計開発
電池・バッテリー駆動型: 電池・バッテリーを用いた紫外線除菌消臭装置の設計開発
紫外線ランプ・電源回路・インバーターの設計開発受託
紫外線ランプ・CCFL・電源回路・インバーターの設計開発受託も行っています。長年にわたり、紫外線・オゾン応用機器の設計開発に携わる経験豊富なエンジニアが対応いたします。お気軽にご相談ください。
紫外線ランプ・電源回路・インバーター: 紫外線(UVC)ランプ・電源回路・インバーターの設計開発受託
CCFL電源・インバーター: CCFL電源・インバーターの設計開発委託