業務用オゾン発生装置とは、高濃度のオゾン(O3)を発生させ、その強力な酸化作用によって、脱臭、除菌、ウイルス対策、カビ対策などに効果を発揮する機器です。
家庭用よりもオゾン発生量が多いため、ホテル、旅館、医療機関、食品工場、病院、介護施設、オフィスビルなど、広い空間や強力な脱臭・除菌が必要な業務用途で使用されます。
しかし、高濃度オゾンは菌やウイルスだけでなく、人や動物を含めたすべての生物にとって有害であり、オゾンの使い方や濃度を間違えると、人体にも影響を及ぼします。
業務用オゾン発生装置を購入される際は、十分な知識と実績、アフターフォローのある業者を選ぶことが重要です。ここでは適切な機種選定のポイントと注意点を解説します。
オゾンの酸化力と脱臭・除菌のメカニズム
オゾンは3つの酸素原子からなる物質です。酸素は通常酸素原子2つで構成されていますが、オゾンは酸素原子が1つ多く、その原子が非常に不安定なため他の物質と結合しやすい性質を持っています。
この不安定な酸素原子が臭いの原因物質と結合し、酸化分解することで、臭いの元を断ち切ります。例えば、タバコ臭、体臭、カビ臭、ペット臭、腐敗臭、化学物質臭など、多様な悪臭に対して効果を発揮します。
オゾンによる脱臭の仕組み
- オゾン(O3)が臭気物質と接触
- オゾン分子が酸素原子(O)と酸素分子(O2)に分かれる
- 酸素原子(O)が臭気物質と反応して酸化分解
- 臭気物質が分解され無臭の物質に変化
オゾンが臭いの原因となる分子(例:アンモニア、硫化水素など)と反応し、水や二酸化炭素などの無臭の物質に変化させます。この酸化分解反応は、他の脱臭方法(吸着やマスキングなど)とは異なり、臭いを根本から除去するため、より高い効果が期待できます。
オゾンによるウイルス対策・除菌効果の仕組み
オゾンはウイルスや細菌の細胞膜や遺伝子に直接作用し、その構造を破壊することで不活化させます。
多くの研究で、オゾンがインフルエンザウイルスやノロウイルス、大腸菌、黄色ブドウ球菌など、様々なウイルスや細菌に対して効果があることが報告されています。
また、塩素系消毒剤に比べて、より低い濃度で効果を発揮し、耐性菌が発生しにくいという利点があります。
オゾンによるコロナウイルス不活性化
例えば、藤田医科大学の村田貴之教授らの研究グループが、低濃度のオゾンガスでも新型コロナウイルスに対して効果があることを世界に先駆けて発見したと発表しました。
オゾンガス濃度を0.1ppmまたは0.05ppmとし、10時間曝露させた場合、新型コロナウイルスは4.6%まで減少しました。これにより、低濃度かつ人体に許容される濃度のオゾンガスであっても新型コロナウイルスに対して除染効果を有することが、世界で初めて明らかになりました。
このように、オゾン発生装置はウイルス対策としても有効な手段であり、多くの人が集まる場所や、除菌・衛生管理が必要な施設で使われています。
オゾン発生量の目安と機能
オゾン発生装置を選ぶ際に重要なのが、設置場所の広さと用途に適したオゾン発生量(出力)の機種を選ぶことです。オゾン発生量は「mg/h」という単位で表され、1時間あたりに発生するオゾンの量を示します。
オゾン発生量の目安
以下はオゾン発生量の目安です。設置場所の構造や換気状況、求められる効果などによって必要なオゾン発生量は変わり、発生量が不足すると十分な効果が得られません。
設置の際は専門業者に相談することをお勧めします。
広さ | オゾン発生量(mg/h) | 用途 |
---|---|---|
~10㎡ | 500~1,000 | 客室、トイレ、小規模店舗の消臭 |
10~50㎡ | 1,000~5,000 | レストラン、オフィス、会議室の消臭・除菌 |
50~100㎡ | 5,000~10,000 | 食品加工工場、倉庫の衛生管理、空間除菌 |
100㎡以上 | 10,000~ | 大規模施設、体育館、プールの除菌・ウイルス対策 |
タイマー機能の重要性とメリット
オゾン発生の開始・停止時間を設定できる機能で、無人環境でも安全にオゾン処理を行うためには必須の機能です。夜間や休日など、人のいない時間帯でも安全かつ効果的に脱臭・除菌を行うことができます。
24時間タイマー機能があれば、設定した時間に自動的にオゾンを発生・停止させることができます。
オゾン回収機能でオゾン濃度をコントロール
オゾン回収機能は、発生させたオゾンを特殊な触媒で短時間に普通の空気に戻します。
高濃度オゾンはすべての生物にとって有害であり、オゾンの使い方や濃度を間違えると人体にも影響を及ぼしますが、オゾン回収機能があれば、高濃度オゾンを有効活用しながら安全性を高めることができます。
これらの機能は、オゾンの安全かつ効率的な運用に大きく貢献します。
業務用オゾン発生装置の価格とランニングコスト
業務用オゾン発生装置の導入には、初期費用(機器本体価格)とランニングコスト(電気代、メンテナンス費用)が必要です。
業務用オゾン発生装置の価格は、オゾン発生量や機能、メーカーによって異なりますが、数万円から数十万円程度が相場です。
ランニングコストは、主に電気代とメンテナンス費用です。電気代は、製品の消費電力と使用時間によって異なります。消費電力は製品の仕様書に記載されていますので、事前に確認しましょう。
メンテナンス費用は、主にフィルター交換やオゾン発生体の交換にかかる費用です。交換頻度は製品によって異なりますが、一般的には数ヶ月から数年に一度です。
例えば、消費電力が50Wの機器を1日2時間、30日間使用した場合の電気代は約300円~400円程度です(参考値)。メンテナンス費用は製品によって異なりますが、数千円から数万円程度が目安です。
業務用オゾン発生装置の安全・効果的な使い方と注意点
業務用オゾン発生装置は、高濃度のオゾンを発生させるため、誤った使い方をすると人体や物品に悪影響を及ぼす可能性があります。
安全かつ効果的に使用するために、正しい使い方と注意点を理解しておくことが重要です。
オゾン発生装置を安全に使うための手順
- 使用環境の確認: 換気が十分に行える環境であることを確認してください。密閉された空間で使用すると、オゾン濃度が過剰に高くなる危険性があります。
- 無人環境で使用する: オゾン発生装置の使用中は、人やペットがその空間にいないことを確認してください。
- タイマー設定: タイマー機能を使用して、適切な運転時間を設定してください。
- 使用後の換気: 運転終了後は、必ず窓を開けるなどして十分に換気を行い、オゾンを屋外に排出してください。
- 機器のメンテナンス: 定期的にフィルターやオゾン発生体の清掃・交換を行い、機器を良好な状態に保ってください。
人体への影響は?オゾン使用時の換気と入室制限
高濃度のオゾンを吸入すると、目や喉の痛み、咳、頭痛、呼吸困難などの症状が現れることがあります。そのため、オゾン発生装置の使用中は、必ず無人環境とし、使用後は十分に換気を行うことが重要です。
日本産業衛生学会では、オゾンの作業環境基準を0.1ppm以下と定めています。オゾン発生装置を使用するときは、この基準値を超えないように注意してください。
換気時間の目安は、部屋の広さやオゾン発生量によって異なりますが、一般的には30分から1時間程度です。また、オゾン臭が残っている場合は、さらに換気を続けてください。
業務用オゾン発生装置のメリット・デメリット
業務用オゾン発生装置は、その強力な脱臭・除菌効果から、様々な場所で活用されていますが、利用の際はメリット・デメリットの両方を理解することが重要です。
強力な消臭・除菌効果!オゾン発生装置のメリット
- 強力な脱臭効果: オゾンは、様々な悪臭を根本から分解し、強力な脱臭効果を発揮します。
- 優れた除菌効果: オゾンは、ウイルスや細菌を不活化させ、優れた除菌効果を発揮します。
- 短時間で効果を発揮: 高濃度のオゾンを発生させるため、短時間で効果を発揮します。
- 様々な空間で使用可能: ホテル、旅館、食品工場、病院、介護施設など、様々な空間で使用できます。
- 化学物質を使わない: オゾンは酸素から生成されるため、化学物質を使用しません。
オゾン発生装置の注意点とリスク
- 人体への影響: 高濃度のオゾンは人体に有害です。使用中は必ず無人環境とし、使用後は十分に換気を行う必要があります。
- 物品への影響: オゾンは酸化力が強いため、ゴムやプラスチックなどの素材を劣化させる可能性があります。
- ランニングコスト: 電気代やメンテナンス費用などのランニングコストがかかります。
- 適切な機種選定が必要: 使用環境に合った適切な機種を選定する必要があります。
オゾン除菌の効果測定
オゾンは業務用の医療機器や、食品工場の食中毒対策といった用途に使われており、食中毒の原因菌に対する効果は十分に実証されています。
しかし、オゾンは目に見えないため、実際の除菌効果は測定しないとわかりません。特に食品工場や飲食店では、細菌の汚染度を事前に知るための検査が必要です。
一例として、シンクや取手、作業台は人の手で触れることも多く、細菌類が繁殖しやすい場所です。
食品工場やレストラン厨房の各ポイントでふき取り検査を実施し、シャーレーによる培養を行うと、オゾン発生装置の殺菌効果が目に見える形でわかります。
オゾン導入前検査と効果測定について:オゾン除菌の効果測定
業務用オゾン発生装置の用途と活用事例
業務用オゾン発生装置は、強力な脱臭・除菌効果を発揮するため、様々な場所で活用されています。
ホテルや旅館の消臭・除菌対策
ホテルや旅館では、客室のタバコ臭、体臭、カビ臭などの消臭対策が重要です。
また、ウイルスや細菌の除菌対策も欠かせません。業務用オゾン発生装置は、客室の消臭・除菌を短時間で効果的に行うことができるため、多くのホテルや旅館で導入されています。
病院・医療機関
病院や医療機関では様々な病気や疾患を持った患者が訪れるため、感染症対策が義務付けられています。
- 調理室の消臭・除菌
- 手術室、診療室、病院、待合室の消臭除菌
老人ホーム・介護施設
老人ホームや介護施設の入居者はウイルスに対する抵抗力が落ちているため、インフルエンザウイルスやノロウイルスの集団感染が発生しやすいと考えられます。
- 入居者の感染対策
- 食堂や調理室の消臭・除菌
- 加齢臭やオムツ臭などの消臭
- 施設内全般の除菌消臭
食品工場・加工所
食品工場や食品加工場では、カビの発生は大きな問題です。業務用オゾン発生装置は、カビの発生を抑制する効果があるため、食品工場や加工場の衛生管理に最適です。
精肉、鶏肉、水産物、製菓、製パン、製麺、惣菜、漬物、豆腐、冷凍食品工場向け
- 製品のカビ、菌の発生の防止
- 作業場、厨房の消臭除菌、調理台、機械の表面除菌と落下菌防止
スーパーのバックヤード・ゴミ置き場
- 厨房の消臭・除菌、調理台、まな板等の表面除菌と落下菌防止
- クリーンルームの除菌
- ごみ置き場等の消臭除菌、害虫対策
導入を検討する際には、本記事で紹介した選び方、使い方、注意点などを参考に、自社に最適な製品を選び、安全かつ効果的に使用してください。
紫外線・オゾン機器・電源の設計開発
エアピュアでは、過去に紫外線やオゾンを活用した空気清浄機や、医療機関・食品工場向けの流水型水殺菌装置・除菌防臭機器を多数製作してきました。
その経験を活かして、自社製品の開発販売だけでなく、紫外線とオゾンを活用した小型殺菌消臭ユニットの設計開発や、除菌防臭機器の設計開発受託、機器の製造販売、OEM生産も行っています。
紫外線・オゾン応用機器: 紫外線・オゾン応用機器の設計開発受託
流水型紫外線水殺菌装置: 流水型紫外線水殺菌装置 水の殺菌・水質管理
UV照射装置の設計開発: 紫外線硬化樹脂向けUVランプ・UV照射装置の設計開発
電池・バッテリー駆動型: 電池・バッテリーを用いた紫外線除菌消臭装置の設計開発
紫外線ランプ・電源回路・インバーターの設計開発受託
紫外線ランプ・CCFL・電源回路・インバーターの設計開発受託も行っています。長年にわたり、紫外線・オゾン応用機器の設計開発に携わる経験豊富なエンジニアが対応いたします。お気軽にご相談ください。
紫外線ランプ・電源回路・インバーター: 紫外線(UVC)ランプ・電源回路・インバーターの設計開発受託
CCFL電源・インバーター: CCFL電源・インバーターの設計開発委託