オゾン(Ozone)は酸素原子が3つに結合した物質で、名前はギリシャ語の「匂い(OZEIN)」が由来です。
オゾンはフッ素の次に強い酸化力を持ちながら、薬剤や物質が残らず短時間で分解して扱いやすいため、殺菌や脱臭などの用途に用いられています。
オゾンの性質
オゾン(ozone)は化学記号ではO3とあらわされ、酸素原子Oが3つ固まってできている物質です。
同じく酸素原子Oが2つから成るものは、もちろん酸素O2です。同一種類の元素から成るものの、構造が異なる物質のことを同素体といいますので、オゾンは酸素の同素体と定義されています。
つまり、オゾンと酸素はとても近しい関係にあるのです。O2である酸素は通常の環境ではしっかりとくっついていて安定して存在しています。
地球上の生物が呼吸している空気のうち、21%が酸素ですが、その酸素が簡単に分解されてしまうと、地上の生物はみな酸欠になって困ってしまいます。
しかしオゾンO3の酸素原子3つは常温下において2つと1つ、すなわち酸素O2と酸素原子単体であるOに分離しやすい性質をもっています。このためオゾンは不安定な物質だといわれています。
このオゾンが分離して発生した単体の酸素原子Oというものは、他の物質にくっつきやすい性質をもっています。酸素原子が他の物質にくっつくことを酸化といいます。
電子という概念が生まれて久しい今日では、酸化とは、対象となる物質が電子を失う化学反応、あるいは物質から水素が奪われる反応と定義されています。
しかし18世紀にフランスの化学者ラボアジェが定義したように、酸素原子が他の物質に化合するというとらえ方で日常的には差支えないでしょう。オゾンには非常に強い酸化能力があり、これが除菌、殺菌、脱臭、脱色の効果をもたらすのです。
オゾンの酸化力
ところで、酸化力が大きいとは一体どういうことでしょうか。
酸化力の大きさをあらわす尺度としては、酸化還元電位という単位がもちいられています。還元とは酸化の反対の化学反応でして、ある物質から酸素が奪われることをいいます。
酸化還元電位とは溶液の酸化力あるいは還元力の強さを表す指標であり、その値が正であれば酸化状態にあり、負であれば還元状態にあり、その絶対値が大きければ大きいほど酸化力あるいは還元力も大きくなります。
酸化力が高い物質といえばフッ素やOHラジカルがあり、それに次いでオゾンも酸化力が高い物質です。オゾンの酸化力は塩素の約7倍といわれています。
ただし酸化力が強いからといって、酸化の速度も大きくなるかというと必ずしもそうでもありません。酸化速度は酸化の対象物質によって異なってくるからです。
オゾンで酸化できる金属や有機物
オゾンは強力な酸化力を有するため、金と白金をのぞくほとんどの金属を容易に酸化し、その他多くの無機物とも反応します。
オゾンと無機物との反応においては、オゾンO3の3つの酸素分子のうち単体の酸素原子Oが対象物と化合し、残りの2つのOは酸素分子O2となります。もちろんオゾンは有機物も酸化します。
有機物とは炭素(Carbon)を含む物質です。オゾンによって酸化される有機物として、以下のような物質が挙げられます。
- 不飽和結合をもつオレフィン系やアセチレン系化合物
- 芳香族単環・縮合環化合物
- 炭素・炭素二重結合をもつ化合物
- アミン、硫化物などの求核類
- アルコール、アルデヒド、エーテルなどの酸素を含む化合物
- さまざまな型の炭素・金属結合
このようにオゾンは酸化力が強く、その対象となる反応物質も多いのです。
オゾン濃度を管理して安全に利用
オゾンは濃度をきちんと管理すれば、安全に利用できます。オゾンは上水道の処理に30年以上前から利用されており、浄水場では高度浄水処理として、オゾンを使って水道水をきれいにしています。
そしてありがたいことにオゾンは通常の化学反応では毒性のある副次産物を生み出しません。また多量に使用しても時間の経過とともに分解され、最終的には酸素へ変化するため環境汚染の懸念はない安全な物質でもあります。
高濃度のオゾンは危険ですが、家庭用のオゾン発生器は、安全とされる0.1ppm以上の濃度になることはありません。
現在、オゾンは主にこの酸化特性を生かしてさまざまな場面でわれわれの社会で役立てられています。その活用の歴史をふり返ってみますと、まず大々的に利用されたのは生活用水の浄化という分野でした。